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ホテル・ルワンダ
ルワンダ』。
その国がどこにあるか、そしてどのような歴史を辿ってきたか答えられる人は少ないだろう。
ただ「大虐殺があった国」と言えば、思い出す人が多いかもしれない。

僕の場合、友人のNくんがウガンダへ行っていたので、ルワンダはその隣に位置していたこと、そして以前民族間紛争があって大虐殺があったことだけは知っていた。が、その大虐殺の真相に関しては全く知らなかった。
ホテル・ルワンダ_b0020525_912968.jpg

1994年にアフリカの小国ルワンダで長年続いていたフツ族とツチ族の民族間の争いが大虐殺に発展し、100日で100万人もの罪なき人々が惨殺された。この映画『ホテル・ルワンダ』では、その時の模様を、当時ルワンダの高級ホテルの支配人であったポール・ルセナバギナ(現在ベルギーに住んでいらっしゃるようだ)に焦点を当てて描かれたノンフィクションの映画だ。アメリカ、ヨーロッパ、そして国連までもが「第3世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、命を狙われていたツチ族の妻を持つポールは、行き場所のなくなった孤児や人々をホテルにかくまい、殺されゆく運命にあった1200人の命を救ったという実話だ。
ナチス党員でありながら1200人以上ものユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーになぞらえ、ポールは「アフリカのシンドラー」と呼ばれているが、時代背景のことを考えると、ルワンダの大虐殺は同時代を生きていた僕たちにとってはよりリアルに伝わってくる。

虐殺が起きた1994年。みんなは何をしてましたか?
僕は中学を卒業してブラジルから帰国。単身日本の高校で寮生活を始めたばかりの時でした。最初はたった一人だったけど友達はできたし、生活用品は買い与えられたし、サッカー部に入って何不自由なく高校生活を楽しんでいた。
そんな時である。地球の裏側で大虐殺が起きていたのは。。
当時、遠いアフリカの小国で民族間紛争が虐殺に発展したことを伝えるニュースがあったことは何となく覚えている。そしてその数年後、NHKスペシャルでルワンダの大虐殺が特集されていた。その時に流れた映像が死体がいたるところに転がっている模様で、この世のものとは思えない地獄絵のようなものだったので僕の記憶に残っている。
だが、そのNスペでは対立していたツチ族とフツ族の歴史の変遷を辿ることが主で、西欧諸国や国連がルワンダという国を見捨てたことをあまり伝えていなかった。

僕が思うにこの映画の最大のクライマックスは、難民キャンプと化したホテルに、ベルギーの国連軍が到着したシーンだ。ポール達はヨーロッパ諸国からの介入が来たことを喜んだが、彼らはポール達ルワンダ人を助けに来たのではなく、犠牲者の出ている国連兵士や職員、そしてルワンダにいる外国人を退去させるためだけにやってきたのだ…。それはつまり、世界がルワンダに背を向けたこと。
次々に国連のバスの中に乗り込む国連の職員やホテルに滞在していた外国人たち。それをただ呆然と眺めるしかないポール達ルワンダの人たち。外国人たちの中にはホテルに残って救助活動を続けたいという意志を持った人たちもいたが、軍隊によって強引にバスの中に押し込まれてしまう。個人の力や意志ではどうにもすることのできない、圧倒的な権力という力。権力is power。画家を目指していたヒトラーの青年時代を描いた映画「アドルフの画集」を最近見たが、画家から政治家(扇動家)へ転身過程にあったヒトラーがメモにこう書き記していたことを思い出す。「arts+politics=power」

この大虐殺の間、ルワンダから300万人もの紛争難民が国外へ流出したが、その時になって欧米諸国はようやく救援を開始し、人類史上最大の救援活動となった。

以前このブログでも書いたキリストの生涯を綴った映画『パッション』(→過去のブログ)でもひどく考えさせられたが、それ同等、いやそれ以上に考えさせられる映画なことだけは確かだ。

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この映画、実は当初は日本で全く公開予定がなかったそうですが、僕と同世代の青年によって日本公開が実現したようです。→「ホテル・ルワンダ 日本公開を応援する会

現在公開しているのは、東京では渋谷のシアターNか川崎のチネチッタ、幕張のシネプレックス10(予定)です。

ちなみに僕は渋谷で見ましたが、相当混んでます。1時間待ったにもかかわらず立ち見でした。2時間あるので立ち見はオススメしません…。早めに行ってチケットを買うのをオススメします。
by hayatao | 2006-01-25 04:27 | 映画
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「すべての道はブラジルに通ず」リオ育ちの日本人による徒然日記。ブラジルの建築・デザイン・サッカー関連のことが中心です。建築設計事務所での修行を終え08年12月よりサンパウロ勤務。カステラ工房主宰。
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