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「大日本人」も見たいけどやっぱり河瀬監督でしょう
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やりましたね!
河瀬直美監督の作品、「殯(もがり)の森」がカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しましたね。
昨夜は別の不可解なニュースによって夕刊でトップを飾れませんでしたが、10年来の一ファンとしてはこのニュースは涙物です。。
1997年には同祭で河瀬監督の"萌の朱雀"がカメラドール(新人賞)に選ばれましたが、10年ぶりの快挙!

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"日本の良き風景と空気"を淡々と捉えた映画という点では、河瀬監督の右に出るものはいないでしょう。

僕が河瀬監督の作品を最初に見たのが、大学1年生の頃。
当時はフランス映画にハマっていて、ヌーヴェル・ヴァーグに始まり、「憎しみ」「汚れた血」などのレオス・カラックス作品にすっかり陶酔していたのですが、ふとTSUTAYAで見つけたのが河瀬監督の「萌の朱雀(1996年作)」でした。
それ以来、「日本のオススメ映画を教えてくれ」と言われたら、必ず河瀬監督の作品を勧めるようになりました。芸者やSAMURAIを期待しているブラジル人には全く受けませんが、映画フリークなブラジル人や、SUSHIやYAKISOBAから一歩踏み出して日本文化を少々嗜んでいるブラジル人にとっては大好評なんです。

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↑「萌の朱雀」より

そもそも河瀬監督の作品のどこがそんなに惹かれるのか。

"Saudade(サウダージ)"というポルトガル語を聴いたことのある人は多いと思います。
日本語ではよく"郷愁"というふうに訳されますが、本来Saudadeに該当する意味の日本語はないと言われています。
敢えて訳した感の強いポル語-ポル語辞書を開くと、
「現在や過去を含め愛情や愛着を抱いている人、あるいは事物が、自分から遠く離れ近くにいない時、永久に失われ完全に過去のものとなっている時、そうした人や事物を心に思い描いた折に心に浮かぶ、切ない・淋しい・苦い・悲しい・甘い・懐かしい・快い・楽しいなどの形容詞をはじめ、これらに類するすべての形容詞によって同時に修飾することのできる感情、心の動きを意味する」
ということで、とてもとても一つの単語には集約できない単語が"Saudade"なのです。

むしろ個人的意見としては、Saudadeは"サウダージ"として扱われるべきで、ザビエルが日本にやってきた時に、カステラやパン(ポルトガル語から日本語になった一例)と同じく"砂宇陀ー路"くらいの外来語にしてもよかったはずだと思います。それくらい響きが良くて浪漫溢れる素敵な単語なのです。

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↑「沙羅双樹」より

前置きが長くなりましたが、この"Saudade"という言葉こそ、河瀬監督の映画そのものなのではないかと思います。

河瀬監督の作品の原点は、自分の周辺で起こったことや自分が経験してきたことを私小説的にドキュメンタリー的な手法で映像化しているところにあります。特に地元の奈良県には並大抵ならぬ思い入れがあるようで、作品の題材のほとんどは河瀬監督が過ごした奈良県で、ロケ地ももちろん奈良県という徹底ぶりです。

だからこそ、河瀬監督の作品には"重み"があります。
ハンディカメラで撮られた映像はドキュメンタリーだかフィクションだか見ている者の平衡感覚を狂わせ、BGMをほとんど挿入せずに映像とそこから醸し出される自然の音と空気だけで伝えようとする手法は、逆に説得力があるというか心がひどく揺さぶられます。

ずっと東京暮らしの人にとっても、日本の田舎を知らない人にとっても、奈良の地を訪れたことのない人にとっても、映像の美しさと淡々としたストーリーに吸い込まれていくと、次第に切ないだとか悲しいだとか懐かしいというような形容詞では形容できない不思議な感情と、映像とは別のところでそれぞれの脳裏に浮かぶイメージが浮かんできます。

その感情こそがサウダージ。
そして、その状態こそが"chega de saudades"です。

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↑「火垂」より

ああ、なんかまた全部見たくなってきました。
試験まではロックしておかなきゃ。。
ちなみに、上に挙げた「萌の朱雀」、「沙羅双樹」、「火垂」の他、「杣人物語」、「につつまれて」、「かたつもり」、「垂乳女-tarachime-」あたりの作品はTSUTAYAでレンタルできるはずですのでよろしければどうぞ。

河瀬直美監督オフィシャルサイトへ>>>

ちなみに、今回グランプリを受賞した作品「殯(もがり)の森」は
6月23日(土)より渋谷シネマ・アンジェリカにて。

あ~、ブラジル戻ってmatar a saudadeしたいっす。。ボソッ
もうとっくに溢れてるっつーのに。

でも、河瀬監督の映画を見た後は日本人で良かったなって改めて思うけどね。
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by hayatao | 2007-05-29 04:16 | 映画
たとえ年に1回しか見ない映画でもこれは見るべきだ
すごい映画に出会ってしまった。

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最近はドキュメントばかり見ていた自分でしたが(ここ最近ではエドワード・サイードの半生を追った"OUT OF PLACE"がオススメ)、久しぶりに見たこの”商業”映画は、想像を絶するものでした。

その映画とは『ナイロビの蜂』。DVDでようやく見ることが出来ました。
レイチェル・ワイズがこの映画でゴールデン・グローブ賞で助演女優賞をとったために一気に有名になりましたが、僕としてはこの映画の監督がブラジル人であるという理由がなければ見る機会がなかった映画でした。

監督の名はフェルナンド・メイレレス。ブラジル人映画監督としては1,2を争う超大物監督。そう、良くも悪くも”ファヴェーラ”を題材に世界を圧巻させた「シティ・オブ・ゴッド」を作った監督です。彼にとっては初の海外映画の監督です。

彼が今回手掛けた映画の舞台は、ケニアです。詳細のストーリーはオフィシャルサイトを読んでもらうとして、現実にアフリカで起きた事件を題材にしたジョン・ル・カレの同名小説が原作。庭いじりが趣味の外交官(ちなみに原題は"Constant Gardener")と、女性活動家のあいだに恋が芽生え、結婚した。2人は赴任先のナイロビに渡るが、妻が襲撃され、惨殺される。愛した妻の謎の死から、夫は妻の行動を辿っていく。なぜ妻は死ななければならなかったのか。男性の影がある。浮気をしていたのか。陰謀があるのか。
真実を知らなければならないという強烈な思いで夫は行動する。そして、妻の死の背景にある壮大な陰謀を調査していくうちに、自分がいかに妻を愛し、妻が自分をどれほど愛していたかを知る・・・
『ナイロビの蜂』オフィシャルサイトへ>>

ストーリーの中にスリービーズ(Three Bees)という架空の製薬会社が出てきますが、この名前がアイロニカルに象徴しているように、イギリス政府とケニア政府、そして民間の製薬会社の3者がアフリカの大地で上っ面は医薬品援助という慈善的な名目で3者が大金を得ている現実を描いています。脚色している面はあるでしょうが、そもそも原作者のル・カレはイギリス人で外務英連邦省に入り、MI6に所属していた人なのでこのストーリーの信憑性というか、妙に現実味が帯びてきます。
ロードショー時はアフリカを舞台にしたラブ・ストーリーのような宣伝が打たれていましたが、実際はアフリカを食い物にする者たちの傲慢さや、それゆえの重々しい衝撃的悲劇を前面に打ち出した社会派シネマの側面も強いですね。

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表向きにはブラジルとはなんら関係がありませんが、メイレレスがこの映画の監督を承諾した理由が映画を見終わった後に妙に納得してしまいました。今まで蓋をされてきた社会的現実を映像という手段でドラスティックに拡げていく、彼自身は特に明言していませんが、映画監督である彼が併せ持っているそんなジャーナリスト的視野にこの原作が合致したんでしょう。

彼の独特のカメラワークと天才的な編集は今回も健在です。それもそのはずで、シティ・オブ・ゴッドでは実際にリオ州のファベーラ(いわゆるスラム)で撮影されていましたが、今回もアフリカ最大のスラム、ケニアにあるキベラという場所で手持ちカメラで撮影されたようで、ドキュメントタッチの映像が随所に見られます。

<思ふこと>
「アフリカを見れば世界中で起こっている問題が全て見えてくる。」とはよく言われることだが、限りなく現実に近いであろうこのフィクション映画は、多くのことを語りかけてくる。
愛とは?失ってから初めて気づく本当に大切なものとは?権力とは?資本主義とは?援助とは?アフリカとは?北と南とは?・・・一度に多くの質問を投げかけられた気分だ。

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今、僕がいる事務所ではケニア近くの某国で学校建設プロジェクトが進行中で、年始から調査員が派遣されている。僕はまだ下っ端なので図面を描くことによって想いを馳せているが、アフリカや物資援助の現場と接点があることを考えると、決して他人事ではない。いや、むしろ数年後には現実にそのような現場に行く業務に就く。

つい昨夜のニュースでカンボジアで狼少年ならぬ、19年間行方不明だった女の子が森から発見されたというニュースを読んだ。19年間も森の中にいると野生化して、かがんで歩く姿勢がサルのように変わっており、骨と皮しかない。目はトラのように赤いという。
世間はユビキタス化の反面、24時間衛星で監視され、街に行けばビデオカメラで監視され、全てが見えない光でつながっており、予定調和的に管理されつつある昨今。こんな話は奇跡中の奇跡。0%に近い。
現実を見ると、かつてレヴィ・ストロースが「悲しき熱帯」の中で取り上げたアマゾン奥地のナンビクワラ族は、今では洋服を着て週末にはショッピングセンターに行き、収入を得るために民族衣装を着て未開の民族を演じている。生きていくための有効な手段なのだ。

資本主義が成熟したこの世の中、支援・援助の場にも当然のごとく、大量のお金が行き来するし、不正も未だにまかり通っている。過去のように慈善的主義や人道主義だけではもうどうにもならない。結局、支援・援助分野でも資本主義社会の中でちゃんとアイデアを出せてマネジメントできて利益を出せる人が必要とされているんだよな。とは言っても、スリービーズのような製薬会社は短絡的過ぎて肩を持つ気はないけど。人の道を外れちゃいかんよやっぱり。スラムという予定調和では図れない世界に、いきなり物を押し付けても効果はないんだ。

・・・そんなことを再認識させられました。

メイレレスはこの映画に関してこう言っています。
「いくつかの独特な思い出のせいで、アフリカは僕の中に生き続けることだろう。そこには驚くべき景観とわれわれを温かく迎え入れてくれた人々がいる。とても美しい場所だ。しかし、僕はこの大陸が持つ問題を忘れることが出来ない。それは僕の想像より遥かに大きなものだった。イギリス人は国が貧しいからだという。それも一つ。だが僕のようなブラジル人はこう言うだろう。"何かほかに原因がある"と。彼らの未来はどうなるのか?未来への希望を持つのは難しい。だがわれわれは待たねばならないんだ。」


タラタラ書いてきましたが、何はともあれ、これは睡眠時間を削ってでも見るべき映画であることはたしかです。今年一発目のオススメ。
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by hayatao | 2007-01-20 09:23 | 映画
映画祭でニーマイヤー
今年もやってます「東京国際映画祭」。
毎年やっていて有り難味のなくなってきた感は否めませんが、
唯一観たいと思っていた松本大洋氏の「鉄コン筋クリート」は1日しかやっておらず、結局仕事で見に行けず終い。松本大洋氏のあの独特な世界観がVFXの大御所マイケル・アリアスによってどう料理されるのか・・・非常に楽しみなので、この映画はマストで見に行くしかありません。でも今年はブラジル映画はおろか、ラテンアメリカ系はゼロ。毎度アジア映画が多く、もうネーミングは東京アジア映画祭にしたほうがよい気がする。

一方、地の果てブラジルでは「サンパウロ国際映画祭」やってます。

b0020525_21263120.jpgこちらも今年で30回を迎え、盛り上がりは明らかに東京を凌いでます。webサイトのイントロもかなりイカしてます。ああいうデザイン、ブラジル人なセンスだよな。。。
b0020525_21282084.jpgで、今年の最も注目される作品は、何と言ってもブラジル建築界の重鎮オスカー・ニーマイヤーのドキュメント(監督:Fabiano Maciel)でしょう。御年99歳。先日、家で転んで骨折したというニュースを聞きましたが、すっかり立ち直られたようで一安心。。。
今やミース、コルビュジエ、ライトなど世界の巨匠建築家に仲間入りしたニーマイヤー。"巨匠"と呼ばれる存在が少なくなってきた昨今、99歳で今も現役で活躍されている姿はぜひ一度拝ませてもらわなくてはいけません。何としてでも見に行きたいところですが、、、。DVDが出るのを待つしかないス。

サンパウロ国際映画祭公式サイトはこちら>>>

ちなみに、日本でもニーマイヤー関連のDVDは売ってます。
・「Oscar Niemeyer
発売元:ナウオンメディア。ここが出している建築系ではUFO型住宅「FUTURO」もオススメ。超サイケ。

ニーマイヤー関連の書籍は山ほど出ているので、ここでは全て書きませんが、手ごろな価格で買える中で一番のオススメだけ・・・

・「X knowledge HOME 2003 December オスカー・ニーマイヤーの自由な曲線
南條さん、オータケ兄弟、槇文彦氏、そしてあの映像作家岡村淳さんなど多方面の方が執筆されています。オマケのDVDはくだらなくて眠くなりますが、文章は必読です。

そしてそして、日本で知り合ったニーマイヤーファンIzumiさんによるサイトもぜひ。おそらく彼女ほどのニーマイヤーファンは日本中探してもいないでしょう。
http://www.ponto-de.com/


映画祭の話に戻りますが、今年のサンパウロ映画祭では日本から下の2作品が出品されているようです。

・「ビッグ・リバー」(監督:舩橋淳)
・「ゲルマニウムの夜」(監督:大森立嗣)原作は花村萬月の芥川賞受賞作、らしい。

はて?ご覧になった方、感想教えてください。
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by hayatao | 2006-10-28 00:12 | 映画
夏の締めくくりはブラジル映画祭で
去年は日仏会館でやっていた「ブラジル映画祭」。

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今年はなんと場所を"アバラ骨建築"こと、「東京国際フォーラム」に移動して大開催!!(ちなみに今さら言うのもなんですが、設計者はウルグアイ生まれのアメリカ人、ラファエル・ヴィニオリ氏 (Rafael Vinoly)。

それにしてもフォーラム開催はすげーー。去年のスポンサーから某スポーツメーカーが消えていたのにもかかわらず、この場所での開催だもんなー。某新聞社の力でしょうか。。個人的には職場から10分なのでラッキーっ!!

社会人にはなかなか厳しい時間割ですが、風邪引くなり腹痛を起こすなりして、どにかして一つでも多くのブラジル映画を見てやりましょう。
こりゃ、10日間丸々ブラジル映画漬けな日々ですな。

とりえあず情報まで。また時間があったら作品に関して触れよっかな。


日時:9月15日(金)~9月24日(日)
時間帯:10:00~21:00(アバウトです。各回入れ替え制&日によって上映の時間帯が変わるので詳細は下のサイトを見てください。)

http://www.cinemabrasil.info/
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by hayatao | 2006-08-22 13:05 | 映画
最近見た映画のこと
今日は久しぶりに映画のことでも話そう。
ここ最近見た映画。

「MI3」(2006年アメリカ)
「ALWAYS 3丁目の夕日」(2006年日本)
「ランド・オブ・プレンティ」(2004年アメリカ、ドイツ合作)
「そして、ひと粒のひかり」(2004年コロンビア)
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上の二つはもう言わずと知れた有名作品なので手短に。
●「MI3」は女優がイマイチだったけど、2よりはよかった。
トムが走る走る。おっさんが走るスピードじゃないぜあれは。
冒頭の20分でカーアクション、エロチシズム、ミステリーを入れ込む手法は
さすがハリウッドの王道映画です。
なにはともあれ映画館で見ることをお勧めします。

●「ALWAYS 3丁目の夕日」は白黒テレビが出始めた昭和30年代の東京を舞台に、
人情味溢れる下町の人々の心温まるエピソードが繰り広げられる作品。
建設途中だった東京タワーのCGが話題になっていたので、最初はCGの精度ばかりを
見ていましたが、いつの間にか登場人物に感情移入してしまい涙、涙、涙。
やっぱり自分は昭和の人間だ。DVDでぜひ。映画「力道山」も気になる。

●「ランド・オブ・プレンティ」は巨匠ヴィム・ヴェンダースによる作品。
イスラエルで育ったアメリカ人のラナは、亡き母の手紙を伯父ポールに渡すために10年ぶりにアメリカの地を踏む。伯父はベトナム帰還兵。9.11以来、アメリカを守ろうと自警団のようなものを作って警備(特にアラブ人)を続けていた。そんな彼らがアラブ人の殺人事件をきっかけに再会。ラナはその遺体を家族に渡すため、ポールは事件の真相を究明するために、一緒に旅立つことに。
9・11後、平和主義的なスタンスで描かれた映画作品の中では、ずば抜けて良かった。
「ベルリン天使の詩」「パリ、テキサス」をはじめ、ヴェンダース作品には独特なテンポと映像美いうものがありますが、この作品も然り。彼が訴えるメッセージはピースフルなものなんだけど、それをことさら強調するような内容ではなく、行間と映画全体の持つ雰囲気によってメッセージを伝えてしまう演出には脱帽です。

●で、今回のイチオシ作品「そして、ひと粒のひかり」について。
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コロンビア、ボゴタの小さな田舎町に住む17歳のマリアは、家計のためにバラ農園でトゲ抜きのバイトをしていたが、上司との確執で仕事をやめることに。と同時に、付き合っていた彼氏の子どもを妊娠。どうしてもお金が必要な彼女は、パーティで知り合ったフランクリンという若者から、カプセルに詰め込んだドラッグを胃の中に飲み込み、ニューヨークへ密輸する仕事を紹介され、報酬ほしさに引き受ける。彼女は、袋が体内で破れたら死んでしまう危険を知りつつ、62粒のドラッグを飲み込むのだが・・・

コロンビアの「City of God (原題:Cidade de deus)」。DVDパッケージの帯にはこう宣伝してあったが、一体誰がこんな安っぽいコピーをつけたのか。「City of God」は、監督のフェルナンド・メイレレスがリオのスラムの一部を切り取り、コミカル&スタイリッシュに編集することによって売れる映画へと実現させたのに対し、今回の映画はその対極にある。演出などもいたって地味で淡々とストーリーは進行して行くが、その素朴さこそが正にコロンビアの素顔を描き出しているようだった。また"貧しい"という解説文が目に付くが、マリアの家族はいわゆる貧困状況ではないし、普通の人が送る普通の生活だ。(日本人の平均的な生活レベルで考えたら、そりゃー南米の国の人は金銭的には貧しいさ。)もし前出の「City of God」との共通点を強引に言い当てるとすると、単に南米ということだけ。・・・まぁそんなところにあんまり言及してもつまらないか。

この映画の見所は、普通に生活を送っていた17歳の女の子マリアが、離職と妊娠、そしてフランクリンとの出会いをきっかけに、ドラッグの運び屋となり、あっという間に闇の世界に入っていく彼女の姿と麻薬大国コロンビアの社会的な背景。一方で、17歳ながら自分の価値観、良心と現実との間をもがくマリアの姿。映画のエンディングで彼女が出した答えには妙に納得してしまった。

南米好き+社会派シネマ好きにとってはたまらない秀作です。
DVDでレンタルできるのでチェックしてみてください。
「そして、ひとつぶのひかり」サイトへ>>>
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それにしても、800人以上のオーディションから選ばれた主役のカタリーナ。
めちゃめちゃ美人というわけではないんだけど、妙に惹かれます。
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by hayatao | 2006-07-19 03:16 | 映画
【訂正版】山形・TOKYO・サンパウロ
なんと、以前お知らせした下高井戸シネマでの
「山形・TOKYO・サンパウロ」のドキュメンタリー映画特集なのですが、
てっきりブラジル系の映画がないと思っていたら、
先日ご紹介させていただいたサンパウロ代表の岡村さんの作品が公開されます!!!!!!

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「郷愁は夢のなかで」
(4/22(土)AM 10:00~のみ)
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みなさん、要ちゅうも~く!劇場初公開ですぞ!!
詳細ページへ>>>

・・・直接岡村さんよりご指摘いただき本当にお恥ずかしいです。。
モーニングショーのページは見ていませんでした。。


22日は京王線下高井戸に集合セヨ!!
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by hayatao | 2006-04-11 01:39 | 映画
『北』という言葉が持つイメージ
昨夜はドキュメンタリー映画について書いたのでその延長に。。。

少し前になるが、友人C姉が宣伝の仕事をしているドキュメンタリー映画を見に行った。

その映画の題名は・・・『送還日記』。
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韓国で30年以上の獄中生活を経て出所した北朝鮮の元政治工作員たちを、12年間に渡り記録したドキュメンタリーだ。

さて、この映画、正直言って友人C姉からの紹介がなければ見に行かなかっただろう。
『北朝鮮』『元政治工作員』というキーワードだけで「よしこれは見に行こう!」とはなかなか思えなかった。もっとぶっちゃけると、個人的にはまったく意欲がそそられないテーマともいえた。

実際、ここニッポンで生活していると、「北朝鮮・工作員=拉致」というイメージがまかり通っており、問題意識を持って様々なベクトルから情報を収集し意見を持たなければ、先のネガティブな構図一辺倒になってしまう。ニッポンはブラジルほどメディアに左右される国ではないとは思うが、他諸国同様に、少し気を抜けばメディアという強力な権力によってすぐにコントロールされてしまう。

いや、殊に『北』ということに関して言えば、メディアだけによるものだけではないかもしれない。
ニッポンにとって北朝鮮はすぐお隣さん。歴史を振り返ってみても今まで色々な関係が築き上げられてきた。が、もう一つのお隣さんである韓国が空前のブームになり、韓流ブームに便乗して韓国の多様なカルチャーが紹介されているのとは裏腹に、北朝鮮の情報は相変わらず閉ざされ不気味なままだ。

誇らしげなニュースキャスターのアナウンスをバックに、綺麗な服を着て満面の笑みを浮かべながら国旗を振り、金正日の写真を前に泣き崩れる国民たち・・・。北朝鮮と言われると、そんなチュチェ思想を前面に押し出したプロパガンダ的な映像が浮かんでしまうのは、きっと僕だけではないはずだ。


前置きが長くなりましたが、そんな先入観を抱きつつC姉に会いに行くつもりで見に行ってきました。

12年もテープを回し続けたのだから当然と言えば当然なのだが、2時間30分近くの長作。ドキュメンタリーとしては高校時代に国語の授業で見せられた『ゆきゆきて、神軍』以来の衝撃作だった。『ゆきゆきて、神軍』では、奥崎謙三という超強烈なキャラクターがなければ成り立たない映画だったが、『送還日記』では、奥崎に劣らぬ強烈なキャラクターを持った元工作員のおじいさん達がたくさん出てきたが、それ以上に韓国人であるキム・ドンウォン監督とそのおじいさん達との会話やコミュニケーションが最大の見物だ。(映画界では監督が視線や主観を積極的に露わにするドキュメンタリーのことを「auteur documentary:オーテュール・ドキュ」と言うらしい。)映画が始まってまもなく、近くに座っていた北朝鮮か韓国のおばさんのすすり泣く声にびっくりしてしまったけど、「何も知らなかった」自分もどんどん引き込まれていきました。

是非僕と同じような北に関してほとんど興味がなかった人たちに見てもらいたい映画なので、
あえてここでは詳しくは述べませんが、少なくともニッポン人ならば潜在的に眠っている『北』というイメージが変わるはずです。

このご時世、この種のドキュメンタリーを公開するのには様々な困難が伴ったと思うけど、
お隣さんのことを知るいいきっかけになりました。
ありがとうC姉。

現在は渋谷シネ・ラ・セットのみで公開中ですが、今後大阪、福岡、兵庫など全国で公開されるみたいです。

『送還日記』オフィシャルサイトへ>>>
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by hayatao | 2006-04-08 01:50 | 映画
ホテル・ルワンダ
ルワンダ』。
その国がどこにあるか、そしてどのような歴史を辿ってきたか答えられる人は少ないだろう。
ただ「大虐殺があった国」と言えば、思い出す人が多いかもしれない。

僕の場合、友人のNくんがウガンダへ行っていたので、ルワンダはその隣に位置していたこと、そして以前民族間紛争があって大虐殺があったことだけは知っていた。が、その大虐殺の真相に関しては全く知らなかった。
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1994年にアフリカの小国ルワンダで長年続いていたフツ族とツチ族の民族間の争いが大虐殺に発展し、100日で100万人もの罪なき人々が惨殺された。この映画『ホテル・ルワンダ』では、その時の模様を、当時ルワンダの高級ホテルの支配人であったポール・ルセナバギナ(現在ベルギーに住んでいらっしゃるようだ)に焦点を当てて描かれたノンフィクションの映画だ。アメリカ、ヨーロッパ、そして国連までもが「第3世界の出来事」としてこの悲劇を黙殺する中、命を狙われていたツチ族の妻を持つポールは、行き場所のなくなった孤児や人々をホテルにかくまい、殺されゆく運命にあった1200人の命を救ったという実話だ。
ナチス党員でありながら1200人以上ものユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーになぞらえ、ポールは「アフリカのシンドラー」と呼ばれているが、時代背景のことを考えると、ルワンダの大虐殺は同時代を生きていた僕たちにとってはよりリアルに伝わってくる。

虐殺が起きた1994年。みんなは何をしてましたか?
僕は中学を卒業してブラジルから帰国。単身日本の高校で寮生活を始めたばかりの時でした。最初はたった一人だったけど友達はできたし、生活用品は買い与えられたし、サッカー部に入って何不自由なく高校生活を楽しんでいた。
そんな時である。地球の裏側で大虐殺が起きていたのは。。
当時、遠いアフリカの小国で民族間紛争が虐殺に発展したことを伝えるニュースがあったことは何となく覚えている。そしてその数年後、NHKスペシャルでルワンダの大虐殺が特集されていた。その時に流れた映像が死体がいたるところに転がっている模様で、この世のものとは思えない地獄絵のようなものだったので僕の記憶に残っている。
だが、そのNスペでは対立していたツチ族とフツ族の歴史の変遷を辿ることが主で、西欧諸国や国連がルワンダという国を見捨てたことをあまり伝えていなかった。

僕が思うにこの映画の最大のクライマックスは、難民キャンプと化したホテルに、ベルギーの国連軍が到着したシーンだ。ポール達はヨーロッパ諸国からの介入が来たことを喜んだが、彼らはポール達ルワンダ人を助けに来たのではなく、犠牲者の出ている国連兵士や職員、そしてルワンダにいる外国人を退去させるためだけにやってきたのだ…。それはつまり、世界がルワンダに背を向けたこと。
次々に国連のバスの中に乗り込む国連の職員やホテルに滞在していた外国人たち。それをただ呆然と眺めるしかないポール達ルワンダの人たち。外国人たちの中にはホテルに残って救助活動を続けたいという意志を持った人たちもいたが、軍隊によって強引にバスの中に押し込まれてしまう。個人の力や意志ではどうにもすることのできない、圧倒的な権力という力。権力is power。画家を目指していたヒトラーの青年時代を描いた映画「アドルフの画集」を最近見たが、画家から政治家(扇動家)へ転身過程にあったヒトラーがメモにこう書き記していたことを思い出す。「arts+politics=power」

この大虐殺の間、ルワンダから300万人もの紛争難民が国外へ流出したが、その時になって欧米諸国はようやく救援を開始し、人類史上最大の救援活動となった。

以前このブログでも書いたキリストの生涯を綴った映画『パッション』(→過去のブログ)でもひどく考えさせられたが、それ同等、いやそれ以上に考えさせられる映画なことだけは確かだ。

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この映画、実は当初は日本で全く公開予定がなかったそうですが、僕と同世代の青年によって日本公開が実現したようです。→「ホテル・ルワンダ 日本公開を応援する会

現在公開しているのは、東京では渋谷のシアターNか川崎のチネチッタ、幕張のシネプレックス10(予定)です。

ちなみに僕は渋谷で見ましたが、相当混んでます。1時間待ったにもかかわらず立ち見でした。2時間あるので立ち見はオススメしません…。早めに行ってチケットを買うのをオススメします。
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by hayatao | 2006-01-25 04:27 | 映画
carandiru
先週末は仕事の合間をぬって気分転換。
土曜日は夜からフットサル。2週間休んだせい&連日の睡眠不足で、すっかり体力が低下してしまっていた…。久しぶりに球を蹴りながら限界を超えてしまった。…まぁ限界を超えるとちょっと楽になるんだけどね。フットサルで-2kg。その後の飲み会で+3kgな土曜日でした。。

日曜日は午前中に仕事を済ませ、地元のTSUTAYAが半額レンタルだったのでゆっくり散策。そこで、なんと!!!もう見られないなぁ…と半分あきらめかけていた映画「Carandiru」を偶然にも発見!!
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即決でレンタル。ジャック・ジョンソンとビヨンセもついでにレンタル。家に帰り、PIZZAを注文して早速見入る……や、やばい。この映画も、cidade de deusやBUS174などと同様に決して「面白い」と一言では言いがたい類の映画だが、演出と映像美は素晴らしすぎる。これぞブラジル。ブラジリアンギャグがてんこ盛りな映画です。

元々carandiruとは刑務所の名前なんだけど、地下鉄の駅名にもなっているし、サンパウロの中心からも近所にあるため、どことなくパウリスタにとっては身近な刑務所とも言える。が、施設の老朽化のため、2002年に取り壊されてしまった。carandiruが爆破されるシーンのLIVE中継をニュースで見たことは、今でもはっきりと覚えている。ダイナマイト数発でドッカーン。(個人的には犯罪の巣窟と化してしまって爆破されたアメリカのプルイットアイゴー団地を思い出してしまった。建築とはなんとも儚いものよ。)
話が横道にそれてしまったが、この映画は1992年に実際に起こった実話をもとに作られている。暴徒と化した囚人を相手に軍警が無差別に殺戮を犯した大惨事のお話。でもその悲惨な事件は映画の終盤のみで、映画全体的には刑務所内の日々がコミカルに描かれていた。特に囚人達がどのようにして投獄されたかを巡るシーンが面白おかしくって笑える。なんせ、あのホドリゴ・サントロがオカマ役で出演しているんだもんな…。
監督は「蜘蛛女のキス」で有名なヘクトール・バベンコ。蜘蛛女と同様に今回も切なさの残る映画ではあるけれど、個人的には「carandiru」の方が面白い!!オススメです。
ちなみに僕は帰国前にグアルーリョス空港の本屋でこの映画の原作「Estacao Carandiru」を買っていたことを思い出した。数ページ読んだだけでほったらかしにしてしまったことを反省。。

それにしても最近はブラジル映画が日本でフツーにDVDで見られるんだよな。。すげーよこれって。
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by hayatao | 2005-07-05 03:11 | 映画
Documentario
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今週末から渋谷ライズエックスにて「BUS174」が公開される。
リオで起きたバスジャック事件のドキュメント映画。
まだ見ていないので何ともいえないが、少なくともブラジル人からは「見ろ」とか「見るな」とか、色々言われている。Cidade de Deusがブラジルを取り巻く社会問題をポップな演出で表現したとすると、今回の映画はドキュメントというところに味噌がありそうだ。

まさか日本でやるとは思っていなかったので、この機会は逃すまい。
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by hayatao | 2005-06-02 02:26 | 映画



「すべての道はブラジルに通ず」リオ育ちの日本人による徒然日記。ブラジルの建築・デザイン・サッカー関連のことが中心です。建築設計事務所での修行を終え08年12月よりサンパウロ勤務。カステラ工房主宰。
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「Save the 下北沢」Save the 下北沢
僕は世田谷区による下北沢再開発計画を断固として許さない!ブラジル南部の環境都市、クリチーバ市の元市長のジャイミ・レルネル氏も代替案を提案しています。

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