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一人のブラジル人が僕に与えてくれたサウダージ
ここ1週間は目まぐるしく忙しかった。

10月7日~11日 TDB(東京デザイナーズブロック)

仕事でTDBへ出品。会場は表参道の雑貨屋WISE・WISE。展示会場の設営と撤去のみならず、9日にはTITLEとのタイアップしたシンポジウムもあったため、二重苦的に忙しかった。台風の影響でイベントの前半はお客さんの入りが悪かったが、最終日はかなり盛況だった。友達も数人来てくれた。自分にとって初めてのTDB。結局仕事で他はほとんど回れなかったが、友達によると今年は六本木の芋洗坂が熱かったらしい。来年はほかを回ってみるか。それにしても仕事中は渋谷表参道周辺を歩き回る機会が多かった。テナントが目まぐるしく入れ替わり、新しい店がどんどん出来上がっている。人が集まり続ける限り、更新され続ける街、渋谷・表参道界隈。僕にとっては何でもありで何だかうそ臭いTDBよりは、現実の行き続ける街、更新され続ける街の方がよっぽど面白い。果たしてTDBを渋谷・表参道でやる意義がそこまであるのだろうか。テナントの空室率が目立つ八丁堀界隈のCET(セントラルイースト東京)のイベントのほうが意義があるように僕には思えるのだがどうだろうか。

10月10日 ジョアン再来日

去年は2日間大枚を払って生音を聞きに行ったが、今年は一日だけ行くことにした。その一日もTDBと重なってかなり危うかったが、何とか時間をやりくりしてライブ会場となる東京国際フォーラムへ間にあう。こういう時こそ遅刻魔ジョアンに感謝しなくてはいけない。
さて、問題のライブ。席が去年よりもだいぶ後ろだったため、ジョアンがpequinininho de mais だった…。個人的には今年は去年の初来日ほど興奮はせず、ゆっくり落ち着いて、時には居眠りをしながら聞くことが出来た。序盤は去年聞けなかったレパートリーを展開。きっとこれはジョアンの気遣いだろう(?)。居眠りをしながら中盤に差し掛かったあたりで、お決まりの空白タイム。ジョアンはギターを抱えながら何もせず、少しうつむき加減で静止してしまう時間。ただ観客の拍手が鳴り響くだけの時間。今回は10分ほどだっただろうか。そのとき僕はジーっと米粒ほどの大きさのジョアンの顔を眺めていたら、どことなく微笑んでいるような気がした。演奏している最中からもジョアンがすごく乗っていて(事実、左膝はいつもよりもさらに激しく揺れていた。)、本当に日本の地で演奏できることを楽しんでいるような気持ちが伝わってきた。
演奏を聴きながらブラジルで聞いたジョアンのライブと、日本で聞くジョアンの声とギターをシンクロさせてみる。単純に演奏だけ比べてみると、日本公演のときのほうが明らかにジョアンは乗り乗りで、曲のレパートリーもたくさん披露してくれる。…でもやっぱりブラジルで聞いたときのほうが、自分にとっては馴染んでいたというか、フィット感があった。今回ジョアンの演奏にはかなり酔ったが、最終的にはパッとせず違和感が残った。それは一体なんだったのだろうか。
ブラジルで行うジョアンのライブでは酒と食事をしながら聞くタイプが多いため、日本のように変な緊張感がない。だからといって、騒がしいわけでもなく、ほどよい静寂さでジョアンのライブを楽しむことができる。観客もジョアンを「神様」として祭り上げている様子はなく、ジョアンの短いトークにはちゃんと観客からツッコミが入ったりして、コミュニケーションが取れる身近な神様なのだ。…でも一辺倒にライブ会場の雰囲気や観客のせいでもない。これはもう風土性とかいう難しい問題じゃなくて、フィーリングの世界なんだろう。

以前、文化人類学者の今福龍太氏はこんなことを言っていた。

「ブラジルの人間は定期的にMatar Saudadeしなくてはいけない人種ですね。」

「Mater Saudade」
ブラジル人はよくこのフレーズを使う。僕がブラジルから帰国するときにも、随分多くの人からこの台詞を言われた。直訳すれば「郷愁を殺す」になるが、Saudadeと言う単語はポルトガル語以外に存在しない単語だと言われているので、明確に日本語に訳すことは出来ない。それを踏まえた上で説明すると、人にとって「故郷に帰る」、つまり「帰郷する」ことは何か特別な意味を持っている。そして帰郷した際に感じる気持ち、安堵感。その安堵感こそが「Matar Saudade」であると僕は理解している。

日本でブラジル人と話しても決してSaudadeが解消されるわけではないし、ブラジル人のアーティストのライブを日本で見ても然りだ。
きっと今回のジョアンのライブがどこか自分にフィットしなかったのは、自分の中にブラジルに対するSaudadeが飽和状態になっているからだろう。僕の中ではジョアンはボサノバの神様というよりは、一人のブラジル人というイメージであり、さらにジョアンが歌う歌詞を聞いていると、まっすぐに思い浮かべるのがブラジルでの風景や情景だ。つまり「ブラジルなくしてジョアンなし」なのだ。

あーーーまた、後天性サウダージ症候群とでもいうべき病気が発症してしまった。
もういい加減に一度旅行でもいいからブラジルに戻らなきゃ…。

Matar Saudade......

ちなみに聞くところによると最終日は、日本にささげる曲を一曲披露したとか…。来年は最終日だな。。

10月10日ジョアンライブ 曲目 @東京国際フォーラム

1. Nao Vou pra Casa
2. Pra Machucar Meu Coracao
3. Voce Vai Ver
4. Milagre
5. Disse Alguem
6. Marca na Parede (Ismael Netto-Marcio Faccini)
7. Eu Sambo Mesmo
8. Nova Ilusao
9. Um Abraco no Bonfa
10.Sem Voce
11.Acontece Que Eu Sou Baiano
12.Estate
13.Ligia
14.Aguas de Marco
15.So em Teus Bracos
16.Odete (Herivelto Martins - Dunga)
17.Retrato em Branco e Preto
18.A Felicidade
19.Este Seu Olhar
20.Wave
21.Mulata Assanhada
22.Foi a Noite
23.Pra Que Discutir com Madame
24.Meditacao
25.De Conversa em Conversa
26.Samba de uma Nota So
27.Desafinado
28.Chega de Saudade
29.Insensatez
30.Bolinha de Papel
31.O Amor em Paz
32.Tim Tim por Tim Tim
33.Garota de Ipanema
by hayatao | 2004-10-16 11:53
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「すべての道はブラジルに通ず」リオ育ちの日本人による徒然日記。ブラジルの建築・デザイン・サッカー関連のことが中心です。建築設計事務所での修行を終え08年12月よりサンパウロ勤務。カステラ工房主宰。
by hayatao
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