どうしてもすぐに行きたい展覧会があったので、
衝動を抑えきれず仕事を切り上げて行ってきました。 "ERNESTO NETO展" at Gallery小柳 東京で2004年に行われたブラジル・ノスタルジア展にも出品していましたが、他にも金沢21世紀美術館など、様々な展覧会で国際的に活躍する今最も熱いブラジル人現代アーティストの展覧会。僕はサンパウロのItau Culturalで初めて彼の作品を見て、続いてMarisa MonteのDVDで舞台美術として使われていたのを見て以来すっかり虜です。今回は彼の個展が初めて日本で開催されました! 彼の代表的な作品と言えば、女性のストッキングを伸縮させたような空間系の物が多いですが、それらに実際使われている素材はナイロンとコットン。ギャラリーの学芸員によれば、伸縮させる部分にはナイロン、覆って空間を形成させる部分にはコットンを使い分けて一つの空間を作っているとのこと。今回の展示も本人が直接ギャラリーで制作したものだと言う。 彼の作品の面白さは、やはり「触れられる」こと。そして、「感覚を麻痺させてくれる」こと。 今回のギャラリーに置かれた作品の中にも入ることが可能です(上の写真はその内部)。ナイロンとコットンで形成された空間に一度足を踏み入れると・・・閉じ込められているというよりは、包まれていると言う感覚に陥る。感覚的には母なる大地=母胎の中にいるような感じ(だと思う)。素材に触れて寄りかかってみると、ウォーターベッドに寝た時に感じる揺ら揺らする感覚とはまた違った異次元な世界がそこには広がっています。触覚やバランス感覚はすでにそれだけでやられてしまいますが、さらに内部にどこからともなく赤と青の照明が真っ白な穴倉的な空間をうっすらと照らし、何色とも言いがたい絶妙なコントラストを映し出しており、視覚さえも狂わせてくれます。う~む。言葉で表現するのは難しい・・・。 そもそもブラジルでは1950年代後半から60年代にかけて、観客と作品とが一体化することを目指し、全身を使って作品との相互作用を通じて美術を鑑賞するという考え方を示した「新・具体運動」というものがありました。その旗手がHelio OiticicaやLygia Clarkといった、ブラジル人のラディカルなアーティストでした。(特にHelio Oiticicaの功績は素晴らしく、僕は未だに彼を越えるアーティストはいないと思っています。)ネトは、明らかに彼らの影響を受けていますが、より空間表現&空間体験に突出して、アルゴリズム的に身体的な相互作用を引き起こすのが彼の特徴だと思います。 1964年生まれのネトは、リオ生まれリオ育ちの生粋のカリオカ。世界一美しい自然と都市が融合したランドスケープを眺めながら育ち、世界一美しい女性の体のラインを見て育った彼です。彼が作り出す官能的な曲線と空間は、正にそんなバックグラウンドがあるからなんだろうな・・・ それにしても、最近よく見る建築といえば、いわゆる洞窟的建築と言うか穴倉的な建築というか、大地に還るような造形をした物が多い。(ex.「青森県立美術館」by青木淳、「地中美術館」by安藤忠雄)ネト自身も空間寄りのアーティストなので様々な建築物から影響を受けているのでしょうが、例えば身近なところで言えば、伊東豊雄が最近コンペで最優秀賞を取った「台中メトロポリタンオペラハウス」などは造形的にはかなりネトに近いですね。 でも、きっと建築家が目指す究極的な空間を既に実践しているのがネトなんだろうなぁ。ネトの作品に恒久的な強度を加えることができたら、建築は究極的に変わるのは間違いないですね・・・今日はこの辺で寝ることにします・・・zzz ちなみに、ネトの展覧会は小山登美夫ギャラリーでも同時開催中です。 ここも要チェックしなきゃ!
by hayatao
| 2006-08-09 03:11
| 展覧会
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by hayatao
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